12 love storys
一頻り、課長に翻弄されて
体に残る熱を感じながら
ぼんやりと課長の部屋の
天井を見つめていると


「参ったな……。」


と、同じくぼんやり
天井を見つめながら
課長が呟く。


「何が参ったんです?」


と、一応聞くも
当然、二人の関係を
同じ課の山下さんに
バラした事だと思いながら
聞き返す。


「さっきの飲み会でのこと。」


ほらね
そりゃそうだよね。
だって、
あれだけ公私混同になるのは
嫌だからと付き合ってることは
内密に……って
何度も念を押してたの
課長だもんね。


「そうですよね。
山下さんの口が固いことを
祈るしかないですよね。」


そんなには口の軽い人には
見えないし……。


「いや、山下に話したことは
どうでも良い。
寧ろ、広まっても良いくらいです。」


「えっ?」


そう言いながら、
隣に寝転ぶ課長の顔を見ると


「参ったなぁ……。」


と、また。


「山下さんの事じゃないなら……
あっ、もしかして私がやっちゃった
ミスの事ですか?
訂正したんですけど、まだ
直ってない箇所ありましたか?
あちゃ~、やっぱり課長に
もう一度、聞いてからやれば
良かったですよねぇ……」


と、慌てて言うと


「葉月……ベッドで
そんな色気のない話はやめなさい。」


と、呆れた顔で課長もこちらを見て言う。


「あっ、はい……すいません。
でも、だったら何が参ったんですか?」


気になって聞き返すと


「こんな筈じゃなかった。」


「こんな筈?」


「そう、こんなにも一人の女性に
ペースを乱されると思っていなかった。
君のことになるとどうも
抑えが効かなくなる。」


と、片肘を付き頭を支えながら
反対の手では私の唇を
親指でなぞる課長。


「どうも君が側にいると
ダメなようですね……。」


えっ……。


側にいちゃダメって……
どういうこと?


私が?って顔を向けると


「僕は君に夢中になりすぎたようだ。」


「へっ?」


「ほら、そういうところ。
無防備と言うか抜けてるというか
君はいつでも隙だらけで
仕事もそれほど出来る訳ではないのに
それでも責任感だけは強くて
最後まで投げ出さずにやり遂げる。
まぁ、ミスはありますけどね。」








なんだろう。
誉められてる気が
しないのは気のせいか?


「だからーーー」


「だから?」


「目が離せない。」


そう言った課長の目は
初めて笑った顔を見たときと同じ
あの時の三日月のような
優しい目をしていた。



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