最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜

「恭子さん」

「ん?」


俺たちは今、畳の上に横たわり、向かい合わせで抱き合っている。俺は恭子さんの緩くパーマの掛かった柔らかい髪を手で撫でながら、これからある事を恭子さんに提案しようと思う。


「ここと家と会社と、行ったり来たりで恭子さんは大変ですよね?」

「まあ、そうね。さほど苦じゃないけど」

「俺、考えたんですけど、一緒に暮らしませんか?」

「…………」


あれ?

恭子さんの返事を待ったが、それがない。迷ってるのかな。


「ここでは狭いなら、もう少し広いアパートかマンションに引っ越すのもありかなと思うんです。恭子さんはどう思いますか?」

「私、そういう事は考えてなかったから……」

「そうなんですか?」


恭子さんのその言葉に、正直なところ俺はちょっとがっかりした。俺はしばらく前から同棲や結婚の事を考えていたのに、恭子さんは違っていたとは……


あ、そうか。

俺はどっちもあまり変わらないと思ってるが、恭子さんは同棲に反対の人なのかもしれない。きちんと結婚して籍を入れる派なのかも。


うん。その可能性が高いよな。恭子さんは一人娘らしいし。よし。だったら……


「恭子さん、訂正です。同棲みたいな中途半端な事しないで、俺たち結婚しましょう!?」

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