最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
先輩のお友達
取り敢えず瓶ビールを出してもらい、「お疲れ様」と言ってグラスをカチッと合わせた。
「ああ、美味しい……」
莉那先輩はそれをゴクゴクと、豪快と言ってもよいぐらいの勢いで飲んだ。かなり酒に強そうだ。もちろん俺も負けじと喉を鳴らして飲んだけれども。
すぐにおばさんがカウンターに煮物を皿に盛って置いてくれた。
「美味しそう。ね?」
「はい」
大根とチクワとサヤエンドウとブリ?
よく分からないが、濃いめの色でよく味が沁みてそうだ。
「川田君はガッツリ食べる方?」
「と言いますと?」
「私はこうしてお料理をつまんでお酒を戴くだけでお腹一杯になるんだけど、川田君はそれじゃ足りないかな? 男の子だし、若いから……」
「ああ、そういう事ですね。僕は少食な方なんで、大丈夫です」
「そう? よかった」
「あの、楠さん」
「ん?」
「あ、えっと……何でもないです」
俺は莉那先輩が言った「若いから」の言葉が気になり、何か言いたかったが言えなかった。莉那先輩は俺との年の差を意識しているのは明らかで、それが嫌なのだが、かと言って何て言えばいいのか分からなかった。
俺は年の差なんて気にしないが、莉那先輩は違うという事を、改めて認識せざるをえなかった。