最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜

待つこと約2時間。途中、看護師さんが慌ただしく集中治療室から出たり入ったりをしていたが、ようやく医師と思われる人が疲れた顔をして中から出て来た。


「先生、恭子は……?」


やはりその人は医師だったらしく、お母さんはすぐにその人に歩み寄り、不安そうに恭子さんの容体を尋ねた。

固唾を呑んで医師の言葉を待つと……


「命に別状はありません。途中、何度か危ない場面はありましたが」


よかった……


俺の人生の中で、こんなにも安堵した事は今までになかったと思う。

お母さんは医師に何度も頭を下げ、「ありがとうございます」を連呼した。


俺とお父さんも医師に頭を下げつつ、顔を見合わせ微笑み合った。お父さんの目には、涙が浮かんでいた。俺もだけど。

諦めたような事を言っていたご両親だが、娘の無事を願うのは当然の事だと思う。


「今夜は絶対安静ですが、明日には目を覚まし、一般病棟に移れると思います。では……」


と医師は言い、いったん行きかけたのだが立ち止まり、


「後ほど今後について話し合いましょう。私としては、手術する事をお勧めします」


と、ご両親へ言い残して去って行った。

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