最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜

恭子さんはと言うと、俯いて俺の腕を掴んで寄り掛かるようにしながら、また肩で息をしている。やはりまだ具合が悪いみたいだ。


「恭子さん、次の電車で送りますから」


そう彼女の耳元で言ったのだが、返事がない。


「恭子さん?」

「あなたの家で休ませて」

「…………えっ?」


お、俺の家で?


「お願い……」

「え、あ、えっと、散らかってますから……」


と言うほど散らかってはなくて、問題はそこじゃなく……


「構わないわ」

「はあ……」


具合の悪い女性をどうこうしようなんて俺は思わないが、たぶんだけど、大人の男女が、しかも知り合ったばかりなのに、家に連れ込むとかしていいものだろうか……


「お願い。私、もう……」

「わ、わかりました」


人命尊重だよ。うん。何よりも人命第一だ。迷ってなんかいられない。

と自分を納得させ、俺は恭子さんを支えながら駅を出た。


俺のアパートまでは男の足で約20分。近いような遠いような中途半端な距離だ。普段は歩きだが、恭子さんにはきついから迷わずタクシーに乗った。


恭子さんはずっと俯いて俺に寄り掛かっている。よほど具合が悪いのだろう。アパートに着いたら恭子さんを俺のベッドに寝かせ、俺は畳の上に雑魚寝だな。

てな事を俺はぼんやりと考えていた。

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