最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜

考えてみたら、俺が恭子さんと付き合う事を承諾した裏には、それによって莉那先輩と接触する機会を増やし、例えば昼飯には莉那先輩を含めた3人で行く、という打算があったのだが、すっかりそれが逆になってしまった。

それに気付いてはみたものの、ちっとも残念でない俺がいるわけで、やはり田上が言ったように、俺の莉那先輩への気持ちは単なる憧れであって、惚れているのは恭子さんの方、という事で間違いないと思う。


昼になり、俺は会社の正面玄関で恭子さんを待った。すると、今日もパンツルックの恭子さんがゆっくりと俺に向かって歩いて来た。

相変わらず黒縁の眼鏡と真っ赤な口紅ばかりが目立つアンバランスな恭子さんだが、なんだろう、それさえも愛しく思えてしまう。


「お待たせ」

「俺も今来たところです」


恥ずかしそうに目を伏せる恭子さん。そんな彼女に俺まで照れて顔が熱くなってしまった。


「少し洒落たレストランに行こうと思うんですが、いいですか?」


と聞けば、恭子さんはなぜか不安そうな顔で、


「遠いの?」

と言った。


「いいえ、すぐ近くですよ?」

と俺が言うと、


「そう? よかった……」


と言って恭子さんは、柔らかな微笑を顔に浮かべた。なんか恭子さん、変わった?


金曜に会った時の恭子さんと、まるで雰囲気が変わっていると俺は思った。どこがどう変わったのかは、わからないのだが……

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