とけていく…
「明後日、退院だろ?」

「あぁ」

「部屋片付けとくから、笑子さんと来いよ」

 彼がそう言うと、義郎は目を開き涼の顔を見つめた。

「…笑子が、そっち行ったんだってな」

 彼はうなずいた。

「ちゃんと紹介したかったんだがな…」

 弱々しく笑いながら、義郎は言った。

 "痛々しい"。その一言に尽きる。涼は、そう思った。

「…よかったな。いい人そうじゃん、笑子さん」

「いい人だよ」

 穏やかな風が病室に流れ、涼と義郎の髪を揺らした。

「俺は、お前を放ったらかしだったな… 本当に最低な親だよな」

「そんなの、今更何言ってるんだよ」

 涼は、つい鼻で笑った。しかし、真面目な顔をしている義郎を見ると、涼の顔から笑顔が消えた。

「命の時間が迫ってる実感はないんだ。ただ、お前の一人前になった姿はこの
目で見ることができない。それだけが、悔しいよ。もっとお前と話をしなければいけないと思っていたんだ。でも、私はできなかった」

 義郎は、昔を思い出しているのか、目を閉じていた。

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