とけていく…
「…『暇』は、余計だ」

「めちゃうまいコーヒー、おごってあげるからさっ」

 そう言いながら真紀は図々しくドカッと自転車の後ろに座った。

「くそっ」

 舌打ちをしながら、彼は渋々自転車を発進させた。

 結局、彼女のペースに乗せられてしまい、それに従っている自分が情けないと彼は思っていた。

(めちゃうまいコーヒーだって?)

 彼は期待などもはやしていなかった。

(言うことを聞くのは、今日だけだ。明日からは完全無視を貫き通してやる!!)

 そんな誓いが、今の彼の原動力になっていた。

 そして、二駅ほど駅を越えたところで、細い道に入って行った。真紀の口うるさいナビで着いたところは、とても意外な場所だった。



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