とけていく…
 そこは、まさにプライベートスペースだった。まるでログハウス風の室内には、木の温もりを肌で感じることのできる本田家のリビングだったのだ。オレンジ色のライトに優しく照らされていたのは、すべて、木目の生かされた美しい家具だった。所々に、クッションやぬいぐるみなどが並べられており、家族の暖かみを感じることができる、そんな部屋だった。

 その暖かい雰囲気に魅せられていると、涼は肩をポンと軽く叩かれた。振り返ると、そこに真紀が立っていた。

「…今日は来ないと思ってた」

 彼女は、抱えていた黒い服を涼に押し付けながら、そう言った。

「お前だろ、正門にいた紫に助け舟出したの」

「だって、弟の友達が困ってるのに、放っておけないじゃない?」

 得意げに笑い、真紀は彼を追い越して、対面式のキッチンに入ると、戸棚から大きなマグカップを取り出した。

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