キミ、カミ、ヒコーキ
生ぬるい風が気持ちいい。


ひんやり冷たい屋上の床が気持ちいい。


遠くから聞こえるホイッスルの音。砂を蹴る音、誰かと誰かの笑い声。
 
 
 
この場所さえあれば、あたしはもう他に何もいらないと思うの。


大の字になって寝転んでみた。視界には変わり映えのない大きな青空。今にも吸い込まれてしまいそう。



うんそうだ。いっそのこと全て吸い込んじゃえばいいのよ。先生も宿題も親も何もかも。



あたしも。


「あっ、やっぱりここにいたぁ。のぶちゃーん」

「…………」


「おーいのぶちゃーん。もしもーし石崎信子さーん」


青一色の視界を、黒い影が遮った。逆光で顔はよく見えないが、それが100パー“濱村美智子”だということはこの小さな脳みそでも分かってしまった。


あたしとは真逆。気持ち悪いくらい真逆。


あたしが闇の中をうごめくトカゲなら、濱村は虹を渡る蝶だ。

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