ありがとうのその前に


『…』


『え?なに?聞こえないんだけど…?』


『いやッ楽しそうだなぁって言っただけ♪』


『まじ楽しかったよ!じゃまた放課後な♪』



―『嘘』―


あたしはそう呟いた


その言葉は下駄箱にいた生徒達の声に揉み消されたけど。



あたしの目に涙が溢れてくる


『琴音?』

『結衣…あたし…最低なことしちゃった…』


溢れた涙がどんどん頬を伝っていく


『どうしたの?!』


『翔吾のこと信じてあげられなくて…カマかけたの…そしたら…友達といたって…笑顔で嘘ついた…』


嘘をつかれたことよりも信じられなかったことが悔しかった



< 54 / 219 >

この作品をシェア

pagetop