ラブバトル・トリプルトラブル
 そしていよいよその本番の日。

待ちに待ったバレンタインデーがやってきた。


学校は期末試験後、卒業に向けて週一の登校になっていた。


就職活動や入試の準備などで忙しくなるためだった。


その登校日が偶々その日と重なったのだった。


美紀は、チョコレートの包みを三個用意していた。

勿論、大と秀樹と直樹の分だった。


それを見て、ガッカリする者もいた。

自分も欲しいと、クラスメイトの男性陣は密かに期待していたのだ。


そんな中……
本命チョコは誰の手にと、学友達は誰もが固唾を飲んで見守っていた。




 「喧嘩しないでね」

美紀はそう言いながら、全く同じサイズのトリュフチョコを三人に渡した。


それを見届けて、みんなため息を吐いた。


「勘違いしないでね。本当に義理チョコだから」 
美紀はトドメに、ハッキリそう言いながら渡していた。

美紀自身、このままではイヤだったのだ。

だからワザとそう言ったのだった。


「美紀はな、親父を愛しているんだよ」

本当は美紀が誰を好きなのかと言うことを知らないと思い込み、大に告げた直樹。


「えっー!?」
突拍子のない大の声が、クラス全体に広がった。
大はわざと、そう言ったのだった。


「そうか、だからおばさんはあの時……」
直樹に聞こえるように言った後、大はもう一度花火大会の時の沙耶の言動を思い出していた。




 『ねえ、あんた達。美紀ちゃんが誰を好きなのか知ってて言ってる訳?』

言ってしまってから慌てて口をふさいだ沙耶。

『あれ私……? 何ていうことを』
そして沙耶はそっと正樹の顔を伺った。


あの日の……
花火大会のルーフバルコニーの出来事を、大は思い出していた。


「そんな馬鹿な……」
大はガッカリした振りをしていた。


「だろ? 俺達だって納得行かないんだ」

直樹は今まで、交わして来たラブバトルが急に虚しく思えていた。

たから大に打ち明けだのだった。


でもクリスマスに正樹から美紀を託されたと思い込んでいた大。

内心、勝ったことを確信していた。


< 106 / 228 >

この作品をシェア

pagetop