ラブバトル・トリプルトラブル
 「待ってろ、今警察に引き渡すから」


「えっー!? やだ!!」

私はソイツの携帯を取り上げた。


「ごめんなさい。後でちゃんと返すから、今は私にチャンスをください!!」

私はソイツに向かって頭を下げた。




 私の名前は中村紫音。二十歳。

親友の陽菜ちゃんにフラワーフェスティバルに誘われて、新宿駅前で待ち合わせしていたのだ。


そしてその後でルームシェアする家を見に行くはずだったのだ。


(陽菜ちゃんは今何処に居るのだろう?)
気になって携帯を見てみた。


(ありゃ。着信ばっか)

私は慌てて陽菜ちゃんに携帯電話を掛けていた。


「待ってて、友達に説明してもらうから」

私は自分の言葉の意味など理解していなかった。

一体何をしようとしているのだろう。

陽菜ちゃんにもこの状況が解る訳ないのに……




 「もしもし陽菜ちゃん?」
恐る恐る携帯を掛ける。


『約束すっぽかし何遣ってるの? 今何処なの?』
普段は大人しい陽菜ちゃんが怒っている。

当たり前だ……
私何遣ってるんだろう?


「解んないの。ねえ陽菜ちゃん、助けて」
私は陽菜ちゃんに泣きついた。


『待ってて……今、GPSで探すから……、大変だよ。紫音ちゃん……、其処大阪だよ』


「えっ、大阪!?」

あまりに唐突な言葉に私は呆然としていた。


(嘘だ。嘘だ)

私の頭は完全にパニック状態だった。




 「あのー、此処大阪ですか?」
まだ整理出来ていないけど、携帯を取り上げた以上確かめなくてはならなかった。


「あぁ、そうだよ」

そう言ったのは、最初に声を掛けてきた人だった。


「知らないうちに此処まで運ばれたか?」

その言葉に私は頷いた。


「事情は解った。それでも、輸送料追加してもらわないとな」

ソイツは私から携帯を受け取りながら真面目に答えていた。




 私と陽菜ちゃんは、三年前に東京で開催された花の見本市で出会った。

広い会場を歩き疲れて、一番隅っこにあるレストランで食事をしようとしていた時だった。


同じ椅子に手を掛けたのだ。
ばつが悪くて、どちらともなく笑い出した。


それが陽菜ちゃんだった。

陽菜ちゃんは、私の手を引いて隣の席に座らせてくれた。




< 166 / 228 >

この作品をシェア

pagetop