好きだったよ、ずっと。【完】
「まぁまぁ、だな」



ふんっ、と鼻をならした春夜。



ったく、人の好きな飲み物と目まで奪っておいて「まぁまぁ」とはなによ。



「じゃぁ、飲まないでよ」



わたしは春夜のほうにあったグラスを奪い取った。



「それにしてもグレープフルーツ搾ってもらうって、お前どんだけ力弱いんだよ」



「仕方ないでしょ、女なんだから」



「はぁ?あの可愛いお姉さんだって搾れんだぞ?」



なによ、可愛いって強調してきて。



どうせわたしは、可愛くないわよ。



わたしは、ほんとに力がなくて、どっかその辺のブリッコ女みたく「搾れな~い」って、わざとじゃないんだ。



見た目だけで判断するなんてサイテー。



「はいはい、どうせわたしは可愛くないですよー。ほら、食べ物注文しちゃおうよ。お腹減ったし」



もうこれ以上は傷つきたくなくて、メニュー表を広げた。



「おぅ。やっぱ、軟骨だよなー。朱里も好きだろ?軟骨」



そう言って笑う春夜。



わたしの好きなものをちゃんと把握してる。
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