sweet wolf
「ま、お前は俺なんて覚えてないらしいけど」
蓮はあたしから離れ、近くのベンチにどかっと腰掛ける。
そして、その綺麗な顔であたしをじっと見た。
蓮に見られると、胸の奥底まで見透かされているような感覚に陥る。
顔が火照り、その顔を直視出来なくなる。
あぁ、これが恋っていうのか。
甘く痺れて、時々酸っぱい。
「そ……そんなことないし!」
あたしはやっとの事で口を開く。
蓮があの子だと分かった瞬間、さらなる緊張があたしを襲ってきて。
訳が分からなくなって、ここから逃げ出したいとさえ思う。
「あたしはね……」
あんたのこと、一秒も忘れたことはなかった。
いつもあんたのことを考えて生きてきた。
また会えたらね、必ずお礼を言って、強くなったあたしを見て欲しかった。
なのに、今のあたしは蓮の前で赤くなって震えるばかり。
あれだけ想っていたのに。
あれだけ楽しみにしていたのに。