sweet wolf





は……

何それ。




あたしは顔を引きつらせて直樹と美里を見ていた。





「やりまくるって……」




あたしの声は、ひどく掠れている。




まさか……

まさかね。





そんなあたしにとどめを刺したのは、他ならぬ美里だった。




「あんた、やりまくるの意味も分かんないの?

えっちだよ、えっち!!」






それを聞いた瞬間、顔に血が上る。

胸が苦しくなって、呼吸が荒くなる。

ねぇ、そういう行為って、好きな人とするものだよね?

あたしは、誰とでもそんなことは出来ない。

蓮は、どんな顔をして女を抱くの?

あんな笑顔見たら、誰だって恋に落ちちゃうよ。




「杏奈もあんまり大宮先輩にまとわりつくと、いつ手ぇだされるか……」






それ以上、聞くことが出来なかった。

胸が痛くて苦しくて、これ以上何も知りたくなかった。

ようやく希望の光が見えたのに、それは一瞬にして消されてしまう。

現実は残酷だ。






教室から飛び出たあたしは、ひたすら廊下を走った。

こんな時、決まってあたしは屋上へ向かった。

だけどあたしは、もう屋上へは行けない……






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