sweet wolf
直樹は、その整った顔であたしを見ていた。
蓮よりも優しそうで、その穏やかな目元は知性に溢れている。
その口元は性格の良さを表している。
だけど、いつものほんわりとした笑顔が消えたその顔は、酷く恐ろしく感じた。
「ねぇ、杏ちゃん」
直樹?
……どうしてしまったんだよ!?
「なんで大宮さんなの?」
え?
「僕じゃ、駄目なの?」
えぇ!?
「じ……冗談でしょ」
苦し紛れに言ったその言葉。
直樹の顔を見れば、冗談だなんて思えない。
だけど、あたしは僅かでもその可能性があれば、信じたかった。
あんなへなちょこな直樹が、酷く恐い。