sweet wolf




俺は確かに遊んでいた。

特定の彼女なんて作る気もなく、女は性欲の処理の道具だった。

前戯もなく女を抱き、激しく突き、終わったら棄てた。

それだけだ。

そんな行為を繰り返しながらも、頭の中にはいつも杏がいた。





あの女は今頃何をしてるのか。

男はいるのか。

……ヤったのか。



そんなことばかり考えていた。





そして、九月。

何の前触れもなく、俺の前に奴は現れた。






ストレートの茶色い髪。

短めの前髪。

大きな瞳は俺を睨んで、唇をへの字に曲げていた。




杏はあの頃のまま。

俺の記憶の中の少女を、そのまま成長させたようだった。




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