sweet wolf
直樹は目を丸くしてあたしを見た。
まるで信じられないとでもいうかのように。
気まずい沈黙が押し寄せ、蛇口から水滴の滴る音だけが響いていた。
もしかしたら、直樹は知らないのかもしれない。
でも、あたしは自信を持って言える。
ことの張本人は、春樹だと。
「うそ……」
直樹は喘ぎながら言葉を発する。
「うそじゃない」
とどめを刺すかのように、直樹を睨むあたし。
直樹は困ったように頭を掻いて、こう言った。
「兄に聞いてみるよ」