二重人格三重唱
 「あらっ翼さん一人?」
節子は周りを見ながら言った。


「すいません。実はどうしても陽子には言えないことがありまして、あの陽子には内緒に。実は結婚指輪をここに忘れてしまったみたいです」

翔は翼のフリをして木村家の中に入った。


「あらっ本当? それは言えないね」
節子は笑いながら翔のために昼食を用意していた。

実は翔は合格祝いに使った車の中で両親が殺されたと推理し、証拠を見つける目的でやって来たのだった。


でも結局何も見つけ出すことが出来ずに、食事の後翔は家に帰らざるを得なかった。


「今度二人で三峰神社に行こうと思っているのです」

帰りがけに何気なく言った翔。


「あらっ、陽子は嫌がりますよ。噂を気にしていましたから」


「噂?」


「陽子から聞いてない?」

首を振る翔。


「イザナミ・イザナギと言うとても仲の良い夫婦だから縁結びなんだけど、ヤキモチ焼きで別れさせられると言われたらしいの。だから行きはがらないわよ」


「へー、そうなんですか。別れさせられたら大変だ」

翔は三峰神社の方角へ目を向けた。


「縁切りか……俺との縁も切れるかな?」
翔は自分の体に手を当てながら翼に言った。


「珍しい。へー、翼さんも俺だなんて言うのね」
節子の言葉に翔は慌てた。


「いやー、本音が出ちゃいました」
翔は頭を掻いた。




< 117 / 147 >

この作品をシェア

pagetop