徹底的にクールな男達
 何も言い返す事ができなかった。

 それは、全て依子の妄想に過ぎないはずなのに、どこか的を得ている気がしたからだった。

 大体、恋愛などそもそもあまり興味はない。

 女に好かれることなど慣れているし、かといってこちらが誠意を見せてもわりと分かってもらえないし。だから、適当にそれらしく相手役をすることに慣れてしまっていた。

 好きだと言われることなど珍しくもなんとなもないし、溺れたようにしがみついてくるのもいつものこと。

 かといって、適当に相手をするのが飽きてしまってもそれなりに対応はするし、もちろん身体も重ねる。性欲がある時で手早く済ませたい時は風俗にも行く。浮気は面倒なのでほとんどしたことはないが、それほど悪いことだとも思わない。

 そんな中、俺は依子と結婚を決めた。

 最初は社内の人間だということもあるし、相手が望んだので下ろした。だが、それでも生き延びた俺の子は愛おしくて仕方なかったのだ。

 それと同時に依子も妻として見ているつもりだった。

 だが、それは確かにつもりなのかもしれなかった。

 病室から「煙草を吸ってくる」と外へ出た俺は、戻ることもできず、ただ車のフロントガラス越しに煙を肺に流しながら空を見上げていた。

 妊娠したから結婚した。

 なのに、流産した。

 その先の結婚生活はあり得るのか。

 その先に、将来はあり得るのか。

 離婚しかないのか。

 そうすべきなのか。

 考えるのが嫌で、溜息を吐いて、もう一度夜空を見上げた。
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