とけない気持ち

"素直な遥"

結衣を泣かせてしまった次の日、俺は結衣の家まで行ってみた。

チャイムを鳴らすと、結衣が「はい、」と出た。

「あっ、結衣。俺」

「オレオレ詐欺ですか?」

結衣はくすっと笑いながら言うと、切って玄関のドアを開けた。

「遥!」

結衣は笑顔で俺の名前を呼ぶと、手招きをした。

「入っていいの?」

「うん、誰もいないよ」

靴を脱いで玄関に上がると、人の家の匂いがする。

「あー、結衣の家の匂い」

「どんなのよ?」

笑いながら結衣は階段を上っていく。

部屋のドア開けると、くるっと振り返って、

「部屋汚いけど...」

と言った。

「大丈夫、そう言って綺麗だから」

実際、毎回言ってるけどいつも綺麗だ。

結衣の部屋に上がると、案の定綺麗に整頓されている。

「やっぱ綺麗」

思わず声に出てしまう。

「何も言わずにくるって珍しいね?」

机の上を片付けながら、結衣が言った。

「うん、あのさ...」

一瞬、言葉に詰まった。

また、足に新しいあざを見つけてしまったから。

「昨日泣かせてごめん。でもできれば言って、俺聞くから」

「...気にしないでって言ったでしょ?」

少し冷たい目をする結衣。

「人に嫌なこと話すの苦手って前言ったし」

「聞いたけどさ...」

結衣は人に辛いことを言えない性格らしく、前からその事は言われていた。

ためやすいとこ、心配なんだけど。

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