助手席にピアス
Sweet*12

クリスマス


十二月初旬の今日は、いつにも増して寒さが厳しかった。午前の業務を終わらせた私と美菜ちゃんは、制服の上にコートを羽織ると足早に会社を後にする。目的地はもちろん、イタリアンレストラン・ボーノだ。

暖房が程よく効いた店内に入ると、空いていたいつもの席に座り、本日のオススメであるほうれん草とベーコンのパスタをオーダーする。

「美菜ちゃん、クリスマスイヴは彼とどう過ごすの?」

「今年のクリスマスって二十三日から三連休でしょ。だからボードしに行くことにした」

美菜ちゃんの言う通り、今年のクリスマスは二十三日が祝日の金曜日。そして二十四日と二十五日は土日となるため、ハニーフーズ株式会社は三連休となる。

「わぁ、いいな。まさにホワイトクリスマスだね」

「まあね。で? 雛子はどう過ごすの?」

「私は桜田さんのお手伝い」

クリスマスに予定があるなら無理して店に来る必要はないと、桜田さんは気を遣ってくれた。

けれど彼氏もいない私のクリスマスの三連休のスケジュールは、真っ白。だから張り切って、ガトー・桜の手伝いをすることに決めたのだ。

週末に店に通い始めてから約一ケ月半が過ぎた今では、段取りよく接客をこなせるようになったし、スポンジケーキも上手く焼けるようになった。クリームをケーキに塗るナッペもデコレーションも、桜田さんの指示通り練習を重ねて上達した。

「美菜ちゃん。普通のケーキ屋さんは前もってスポンジを大量に焼いて冷凍しておくの。でも桜田さんはそれをすると風味が落ちるからって言って、クリスマスは一日限定二十個のケーキしか予約を受けつけないんだよ」

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