助手席にピアス

次の日の日曜日。いつものようにガトー・桜に行くと「朔とのデートはどうだった?」と桜田さんに聞かれた。

昨日のデートで私と朔ちゃんがどんな話をしたのかは、桜田さんには内緒。だから私は「楽しかったですよ」と軽く答える。

「へえ」とニヤける桜田さんがなにを言いたいのかよくわからないけど、私は忘れないうちに、と話を切り出した。

「桜田さん。またで申し訳ないんですけど、来週お休みをしてもいいですか?」

「それは構わないが、もしかして朔とまたデートか?」

私をからかっているらしい桜田さんを、半眼で見つめる。

「朔ちゃんは来月、莉緒さんと結婚するんですよ。そんなわけないでしょ?」

口数が増えた桜田さんとの会話に、すっかり慣れた。できることなら心から信頼できる桜田さんに、自分の決断を聞いてもらいたい気持ちが膨らんだ。

でも一番初めに話をしなくちゃいけないのは、家族だよね……。

そんなことを考えながら、ロッカーからモップを取り出すと開店準備に取りかかった。

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