助手席にピアス

その意図がわからないまま、とうとう店の前までたどり着いてしまった。五段ある階段を昇った先にあるのは、お店の扉。すでにCLOSEのプレートがかかっているのに、朔ちゃんはガラス戸の扉を遠慮することなく開けた。

ドアベルがカランと響く。促されるまま店内へ足を踏み入れれば、ケーキを並べるショーケースが目に飛び込んできた。

しかし閉店後だからだろうか。あいにく、ケーキは一点も残っていない。

なんだ、残念……。

がっくりと肩を落としてショーケースから視線を上げる。すると、店内の奥からひとりの男性が姿を現した。白いコックコートを着ているから、きっとガトー・桜のパティシエなんだろう。

人を上から見下ろす高い身長は威圧感があり、奥二重の目つきも鋭い。笑えばそれなりに格好いいはずなのに、彼は私を見ても愛想笑いすら浮かべることはなかった。

いわゆる強面な顔立ちをしているこの彼が、繊細な洋菓子を作るなんて信じられない。

「忙しいのに悪いな。真澄(ますみ)」

「いや、どうも」

朔ちゃんが真澄と呼んだ彼は、莉緒さんに向かって小さく頭を下げると、食い入るように私を見つめた。

「真澄、この子が前に話した、青山雛子ちゃん」

「朔?」

「ん?」

「コイツまだ、未成年じゃないのか?」

み、み、未成年って!!

< 63 / 249 >

この作品をシェア

pagetop