My sweet lover
今私は、社長の車の助手席に乗っている。


社長はずっと無言のままだ。


気まずくてしょうがない。


社長って黙ってるとすごく怖い。


一体どうしちゃったんだろう。


あの後、私と朝日さんがレーンに戻ると、二人はちょうどゲームを終えたところらしくて、ボールを片付けていた。


ありささんが「一緒に夕飯でもどう?」と誘ってくれたのに、社長はあっさりと断っていた。


そして今、こうして社長と二人ショッピングモールを後にしている、というわけだ。


朝日さんも私もまだまだ一緒にいたかったけど、お互い社長には何も言えなくて、後ろ髪を引かれつつ手を振って別れた。


社長は相変わらず黙ったまま、綺麗な手でハンドルを握って運転をしている。


私は仕方なく、夕暮れの街並みをボーッと眺めた。


目を閉じると、朝日さんに抱きしめられた感触が蘇って来る。


重ねられた唇にそっと触れてみた。


思い出しただけで、体温が上がるのを感じる。


朝日さんと撮ったプリクラは、私と朝日さんがキスしているところがバッチリ撮れていて、あまりの恥ずかしさに私は持って帰る気にはなれなかった。

 
朝日さんは嬉しそうにポケットに入れていたけれど…。


朝日さんが言った“僕を狂わせる”って言葉。


あれは私が無意識でやった事じゃなくて、社長の戦略だったんだよね。


社長が会うなとか引っ越せとか言ったから、だから朝日さんが私に夢中になってくれてるんだ。


社長ってすごい。


恋愛経験が豊富なんだろうな。


お礼を言いたいところだけど、そんなことを言ったら怒られてしまいそうだから、言うのはやめておこうと思う私だった。

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