My sweet lover
「俺がお前を嫌いになるわけないだろう?それを言うなら俺だよ。
俺こそお前に嫌われたかと思った…」


「そんな。嫌いになんて…」


「いつも素直で従順な由梨が、あんなに嫌がったんだ。よっぽど怖かったんだろう?ごめんな…」


「夏樹さん…」


「ゆっくりでいいよ…由梨」


そう言って夏樹さんが、優しく髪を撫でてくれる。

 
その手がすごくあたたかくて、また涙が流れた。


「由梨、疲れただろ?もう寝ようか」


そう言うと、夏樹さんはソファから起き上がった。


私も立ち上がると、すぐに夏樹さんが私の手を取った。


手を繋いだままゆっくり歩き出すと、シンとしたリビングに二人の足音が響き渡る。


ひんやりと冷たい廊下に出ると、夏樹さんが自分の部屋の前で止まって私を振り返った。


「由梨どうする?自分の部屋で寝るか?」


「え…?」


どういう…意味?


昨日は毎晩一緒に寝ようって言ってくれたのに…。


もしかして、私がいたら迷惑なの?


「由梨…?」


いけない。また涙が…。


「どうしたんだよ。泣くなよ…」


夏樹さんがそっと抱きしめてくれる。


あぁ、やっぱりこの腕と胸に私はホッとしてしまう。


「夏樹さん…」


「ん?」


「一緒に、寝ちゃ駄目ですか?」


もっと、一緒にいたい。


もっと、抱きしめて欲しい。


一線を越えるのは怖いくせに、夏樹さんに抱きしめられたいって思う私は変なのかな…?


「……バカ。いいに決まってる」


そう言うと夏樹さんは私の肩を抱いて、自分の部屋に入れてくれた。
< 308 / 380 >

この作品をシェア

pagetop