嗤うケダモノ

「おはよう、タニグチくん。」


目元を和ませた日向は、セミロングの黒髪を揺らして軽く会釈した。

だが、いつもソレだけ。
特に親しい間柄というワケではない。

しかし今朝は…


「ねぇ、木崎さん。」


背を向けて自分の席に歩きだした日向を、タニグチくんが呼び止めた。

振り向いた日向が首を傾げる。


「ナニ?」


「そのー… 元気?」


「え? うん… うん?」


ナニ聞いてンだろね?

元気だから学校来てンの。
病気だったら家で寝てるよ。

日向が怪訝な顔をすると、タニグチくんは気まずそうに笑って頭を掻いた。


「そーゆー元気じゃなくて…
ナニカ困ってるコト、あるンじゃないかなーって。
例えば… 人間関係とか?」


(あー… そーゆー…)


彼がナニを言いたいのか気づいた日向は、唇に薄い笑みを浮かべた。

彼は、日向を取り巻く現状を心配してくれているのだ。

なんてイイヒト。

< 131 / 498 >

この作品をシェア

pagetop