嗤うケダモノ

空に青味が増し、風にぬくもりが増し、桜が咲き誇った。

春デスネ。
ソーデスネ。

藤ヶ丘高校では、春に学園祭が開催される。

祭りなんてとっとと終わらせて 三年生は受験に集中しろ、と。
ソレが有数の進学校であるこの高校の方針だ。

もちろん体育祭は秋にあるのだが、三年生は自由参加。

なんつーか…
盛り上がりに欠けマスヨネ。
ワカリマス。

だからその分、春の学園祭は異常にヒートアップする。

日頃の勉強による鬱憤を晴らすかのように、みんながみんなテンションを上げる。

女装男装当たり前。
有志のバンドがギターを叩き折るのは恒例。
挨拶で壇上に上がった校長のカツラをもぎ取っても許される。

高校中がブっ壊れぎみ。

もちろん数週間前から始まる準備期間も、かなり浮き足立った状態になるのだが…


「ジン、学園祭の立看板の件だが」


「イーヤー」


その準備期間中の放課後。

樹に呼び止められそうになった由仁は、用件を食いぎみで断って教室を飛び出した。

彼はいつも、興味のない面倒な行事には参加しない。

周囲の熱気などおかまいナシ。
どこまでもマイペース。

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