嗤うケダモノ


とにかく、謎でいっぱいの『衝撃の事実』を、今すぐ杏子さんに伝えなくちゃね。

とは思ったものの、ムリだった。

由仁と日向が部屋に戻ると、これまた豪勢な朝食と共に瑠璃子が来ていたから。

この一晩の間に、状況はさらに切迫しちゃったらしい。

またも現れたのだ。
座敷牢に白い光が。

今回は、遅番の仲居サンと一緒に見回りをしていた瑠璃子までもが目撃してしまった。

もう放っとけねェよ。
従業員も怯えてるケド、私もビビってチビりそーだよ。

このままナニもしないっつーなら、緑の神、即ち離婚届を召喚しマス!

そう言って、瑠璃子が孝司郎を説得したそうな。



説得っつーか、脅迫とも言うよネ、ソレ。

かくして旅館存亡の危機と同時に離婚の危機にまで直面した孝司郎は、とうとう折れた。

仕方なく。
ほんと───に仕方なくではあるが、杏子に徐霊を依頼することを決断した。


「先生!
そんなワケですので、今日にでもお祓いをお願いします!」


両手どころか額まで畳に擦りつける瑠璃子を前に、杏子はこっそり苦笑した。

や…

いいケドさ。
するケドさ。

『お祓いゴッコ』だからネ?

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