【完】白衣とお菓子といたずらと
「山下さんに彼女が出来たのに、なんでお前は浮かない顔してるんだよ」


俺もそれが気になる。そう言いたいところだけれど、なんとなく想像できた。


聞いた池田も、理由が分かっているらしくくすくすと笑いながら聞いている始末だ。


それすら不満なのか、香坂は拗ねたような顔をした。


「山下さんに彼女が出来たのは嬉しいですよ。けど、相手が……その相手が小川だなんて。本当にいいんですか?あんな凄く冷たいやつですよ」


やっぱりそうきたか。こいつがそう思うのも無理はない。自分の彼女のことを悪く言われても、理由を知っているから怒れなかった。


実は、昨日美沙が学会に行く前に、そういえばと思い出して香坂との関係を聞いていた。そして、俺は少しこいつに同情した。


「……ハハハ。だから、それはお前にだけだって何度も言っているだろ。彼女、お前のことを嫌っているというか、完全に軽蔑してるもんな」


完全に笑いを堪えきれずに、噴出しながらなんとも正直に残酷な言葉を大山が発していた。


「分かってるっての。山下さん聞いてくださいよ。この前のハロウィンも小川のやつ俺だけ存在を無視しやがったんですよ!ご丁寧に俺以外に楽しそうにお菓子配っていったんですよ!ひどい仕打ちじゃないですか?仮にも俺先輩ですよ。だから、小川が山下さんの彼女ってのが納得いかないんですよ」


縋るように訴えてきたかと思ったら、また拗ねたような表情に変わった。


というか、今聞かされた事実に香坂に本気で同情した。


まさか、ここまで徹底的だとは思ってもみなかった。


「あー、あれは見ものだった。小川、完全に香坂をいないものみたいに扱ってたもんな。何をあそこまで嫌われることをしたんだ?」


美沙の行動を思い出したのか、池田までついに声を出して笑い始めた。

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