【完】白衣とお菓子といたずらと
「山下君、そろそろ退院する?もうフリーで歩けているし、骨もしっかり繋がってしまっているからね」


朝の回診で、ドクターは俺の病室に入るなり、状態など一切聞かずに退院を促してきた。


ちょっと話の切り出し方に疑問を感じたけれど、「退院」という言葉にそんな事どうでもよくなった。


「いいんですか?」


「うん、もう大丈夫だろう。仕事復帰は師長と相談する事になると思うけど、もう入院している必要はないからね。自宅療養で十分」


「ありがとうございます。一応、家族にも連絡して、早いうちに退院日決めます」


「あー、そうするといい。今日、明日でも構わないから」


何とも軽い感じで、重要な事を告げると、先生はさっさと病室から出て行ってしまった。


もうちょっと仕事しろよ!と思ったけど、職員相手だから仕方ないか。







回診のあとすぐに姉ちゃんに電話したけれど、すぐには繋がらず、お昼ころにやっと電話が返ってきた。


退院の許可が出たと報告すると、明日が旦那も仕事が休みだから一緒に迎えにいくと返事が返ってきた。


俺の車が姉ちゃんの家に置いたままだから、旦那と車2台で迎えに来て、そして俺の家まで送ってくれるらしい。


そのあとの世話は彼女にでも任せたら?と余計な一言まで言われてしまったけど。


美沙か……明日は土曜日。日曜は休みのはずだから、来てくれるだろうか?


退院の報告と一緒に、そこも聞いてみることにしようかな。


退院すれば俺は患者じゃなくなるし、ただの恋人として一緒に過ごしたい。……彼女に、触れたい。
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