【完】白衣とお菓子といたずらと
知らない事もあるらしい







「山下さん、仕事復帰おめでとうございます」


「「「かんぱーい」」」


「はい、はい、乾杯」


テンションが高いリハビリ3人が高々と缶ビールを掲げたのに合わせて、俺も乾杯をした。


こいつらバカだなと思いながらも、眺めている分には、微笑ましくて嫌いじゃない。


12月も半ばを過ぎた今日、約束していた池田、香坂、大山との飲み会を決行した。こいつらには悪いけど、明日が休みの俺には平日の飲み会も全く問題ない。


日程は2日前に、俺が独断で決定した。いつにしようかと悩んでいた際に、今日明日は美沙に用事があり、会えないということが判明した。


どうせ家に1人で、次の日は休みだということで、この飲み会になった。


ウチを提供する事で、日程は了承を得た。


「なんか前来た時よりも、生活観が出てきましたね」


「俺も思った」


池田と大山が、不躾に部屋の中をキョロキョロと見回している。


「男の1人暮らし感が薄れてる気がする」


2人の言葉反応した香坂も同じようにキョロキョロとし始めた。


自分では気にしていなかったけれど、そんなにも変わっただろうか?


確かに、美沙用の物が増えたもんな。


改めて見てみると、いくつか目に付いた。


「実際、どれくらいの頻度で小川は来てるんですか?」


興味津々といった顔で池田が訪ねてくる。


どれくらいって、よくよく考えると結構な頻度で美沙がここにいる気がする。


“多い”なんて感じていなかったけど。


「んー、泊まったり泊まらなかったりするけど、週の半分は確実にいるかな」


俺の言葉に、3人は驚いた顔をしていた。


何をそんなに驚く必要があるんだろうか。目の前にいる後輩たちの表情が不思議に感じた。
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