【完】白衣とお菓子といたずらと
「……?」


それにしても、この間は可笑しくないか?


違和感を覚えるくらいに長い間に、俺は首を傾げた。


――……カチカチカチ


静かになってしまった部屋で、規則的な時計の音が異様に際立っている。






「………スー……スー…スー」


静かになったからこそ聞こえた声……いや音?に自分の耳を疑った。


まさかとは思うが、きっとそうだよな。


確かに随分酔っているようではあったけど、マジか……信じられないけれど、絶対に寝てる。聞き間違いでなければ今聞こえているのは、確実に寝息だ。


スッとソファから立ち上がり、テーブルをぐるりと周りお父さんの顔を覗き込むと、完全に眠っている様子だった。


どうしようか……お父さんを見下ろした姿勢のまま、しばらく悩む羽目になった。


こんな展開予想していなかった。というか、普通は誰も予想しないよな。


とりあえず、この辛そうな姿勢を何とかするべきだろう。


「……よっ」


よかった。目……覚まさなかった。


中年太りしていない、スマートなお父さんは軽々とソファの上に乗ってしまった。


看護師をしているんだ、人一人の体位交換をするなんて簡単なことだ。


周りをキョロキョロと見回すけれど、上から掛けられそうなものは見つからなかった。


探すわけにもいかないし。あとは、美沙の帰宅を待つとしよう。


元居た場所に戻り、グラスに残っていたお酒を、グッと一気に飲んだ。
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