【完】白衣とお菓子といたずらと
――ピンポーン


「……ついに来た」


時計を見ると予定の時間と大差ない時間だった。


俺にとっては、もっともっと待っている時間が長かった気がしたけど。


――ピンポーン


なかなか動けずにいた俺を急かすように、二度目のチャイムがなった。


……しまった、考え事をしている場合ではなかった。


急いで松葉杖を手にし、玄関に向かった。


玄関を開けると、俺が待ち望んでいた人物が、本当に立っていた。


いや、来ないんじゃないかと疑っていたわけではなくて、この展開がまだ信じられないだけだ。


「こんにちは」


目が合うと、彼女は俺が好きな笑顔で、ニッコリと微笑んだ。


「ぃ……いらっしゃい。どうぞ」


危うく、声が裏返りそうになったけれど、なんとかごまかす事が出来た……と俺は思っている。


部屋の中へ入るよう促すと、「おじゃまします」と、行儀良く答え靴を脱ぎ始めた。


そして、俺の後に続いて部屋の中へと入っていった。

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