【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
少し話すのに躊躇する章吾を睨むと、軽く息を吐き諦めたように口を開いた。
「会長に聞きたい事があると、辛い表情を浮べながら言っておられました」
「はっ、会長に?」
まさかここで会長の名が出るとは思わなくて、今は誰も座ってはいない会長席の方へと視線を向けた。
会長と…綾香が知り合い?
いや…、
それはないでしょう。
だって昨日、会長は綾香の名をわたしに聞いてきたくらいだ---
では何故?