【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
ソッと壊れ物を触るかのように綾香を抱きしめると、女特有の柔らかさと温かさがふんわりと俺の胸の中で納まる。
なんか…、
すっげー良い匂いするし---
「この香りか?」
思わず呟いてしまったその言葉は綾香には聞えなかったようで、聞き返されることはなかった。
この香りが蓮の言っていた香りなのかと、綾香の髪に顔を埋め瞳を閉じる。
蓮の言っていたような気持ちが高ぶる事はなかったが、この香りをかいでいると俺の心が不思議と落ち着いてくる。
俺にとって心地よいものだと言う事には違いない。