【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
「恢…。ありがとう」
「………」
母さんの胸に抱かれながら顔を横に向け恢に微笑むと、照れくさそうに顔を背けた恢に私の口元が綻んだ。
それからどれくらいの時が経ったのだろうか。
シュン---
しばらくすると扉が自動で開き、男性が入って来た。
「さやか」
「隼人さん」
突然の乱入者に驚き身体を強張らせたが、母も恢も驚いた表情は見せはしなかった。
母さんにいたっては、どこか嬉しそうに目を細めている。
だから警戒する程の人ではないのだろうと胸を撫で下ろし、そして母から身体を離した。
こちらへと向かって来るその男性を見ながら、私は立ち上がる。