【完】イチョウ~あたしは幸せでした~





“舞衣”



桜井くんの少し息交じりの低い声が
あたしの胸を跳ねあがらせる。



「う、うん。」



あたしはドキドキを隠すのに精一杯で、
空返事になってしまった。




「じゃあ、舞衣もさ、俺の事“蒼”って呼んで。」


「え?あたしは桜井くんでいいよ!」


そんなの、緊張して呼べるわけないじゃん……



「呼んで。」



うっ……




ドキドキ……




「あ、あお、蒼っ……」




き、緊張したっ……



「ふっ、詰まり過ぎ」


「だ、だって緊張したもん!!」


「可愛すぎ……」


「え?」


「なんもない!!」


……。



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