声が聴きたい


体の関係を持つのに時間はあまりかからず、ますます和希が1人で夜を過ごすことが増えた。


信吾とは離婚の話を進め、和希の親権の話になったとき、今はアメリカなため、信吾は仕方なく希美花に託した。


希美花は「いらない」と言ったが、養育費など頭の中で計算し、しばらくなら我慢し、実業家と暮らせる時には実家もあるし、預けてしまえと簡単に考えた。


そして、和希が小2の夏休み前、いよいよ離婚が成立し晴れて独身にもどったが、女性は離婚後半年は入籍出来ないと初めて知り、苛立ちが和希の存在に向かった。


『そうだ、九州に行ってる間に新たな生活準備を進めて、手紙とお金を置いて顔を合わせないで……、あの子は賢いし実家も近所だし……そうよ、あたしが離れたらいいのよ』


自分の事だけを考える希美花にとって、和希は『かすがい』ではなく、『重荷』でしかなかった。


和希や家族がどんな想いをするかなんて、思いやることなんて一片もなく。


相手の実業家は、結婚などする気はなかったが、綺麗で社交術に長けている希美花を側に置いておくのは価値があると考えて手を貸した。



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