例えばここに君がいて


「サトル……くん?」


綺麗なサユちゃんの目に見つめられると、吸い込まれそうになる。


「サユちゃん、ちゃんと見て」

「う、……うん?」

「今の俺をちゃんと見てよ」


サユちゃんが体を固くしたまま、俺をじっと見ている。
ああ俺は何を言ってるんだ。
昔の自分にまでヤキモチ焼くなんて余裕が無いにも程がある。

空気が張り詰めて固い。
サユちゃんは戸惑いを隠しもせず、じっとしたまま視線だけを彷徨わせていて、俺は俺で、そこから先を続けれずに固まってしまう。

ぎこちない時間は何分くらいあったのだろう。
実際はたった数分なんだろうけど、俺にはありえないほど長く感じた。


「お腹すいたー!」


背中にサイジの声が響いて、俺は驚いて彼女の手を離す。
サユちゃんも、手を引っ込めておでこや頬を触りまくった。


「俺にもお菓子頂戴」

「う、うん。ちょっと待ってね。サイちゃんたちにはジュ、ジュースだすから」


サユちゃんがどもりながら立ち上がり、代わりにルイとイッサが俺の向かいに座る。


「サイジくんってちょっと空気よめないよね」


ポツリとルイが言うと、イッサがウンウン頷いた。


「……何の話?」


サイジだけが何も分かっていないかのように頭にはてなマークを浮かべていた。


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