鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*

ここには、秘密が多すぎる...。

「ねぇ、恭にぃ。」

未来は恭夜の服の裾を軽くクイッと引っ張る。

「ん?
どした?」

「……鳴ってる。」

未来は蚊の鳴くような小さな声で、ぼそっと言った。

皆はよく聞き取れず、頭に??を浮かべている。
近くにいた恭夜でさえ、??を浮かべていた。

「何が鳴ってんの?」

「にゅぅ、がくしき……ほぅそぅ。」

それだけ言うと、未来は倒れた。
まるで、スローで見ているかのようにゆっくりで……。
恭夜はなるべく振動を与えないように、ゆっくりと未来の体を受け止めた。
細い糸よりも繊細で、硝子よりも壊れやすい。

(いつから未来はこんなに体が弱くなった………?)

恭夜は腕の中で苦しそうにしている未来を見ながら考える。

「また……例のアレか?」

秀麗は落ち着いた声で恭夜に問う。
“あれ”で片付けられてしまうぐらい、未来がこうなるのは珍しくもなかった。

「おそらくな……。」

だから、世でいうシスコンの恭夜でも落ち着いていた。

「未来さん……大丈夫なんすか?」

「けっこう苦しそうだけど……。」

那柚と来は、恭夜の腕の中で苦しそうにしている未来を心配そうに見る。
未来は体を動かすことすら辛いらしく、恭夜に全ての体重を預けている状態だった。

「に、……恭にぃ。」

「未来?!
何か欲しいもんあるか?
何かしてほしいこととか……あとは、えっと…とりあえず何でも言え!」

人の前では落ち着き払っていた恭夜も、未来の声を聞いた途端慌てる。
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