鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
未来が出ていった後、来は身体中の力が抜けたように、床に寝転がった。

「………っは、まぢか。
どうりで学校の上のヤツしかしらねぇことまで知ってるわけだ。
情けねー。
まさかあんなこと知られたとか………な。」

もちろん、ドアの向こうで聞いている未来。
その顔は悲痛に歪んでいた。

そして、そっ…とドアを離れた。

「湖都音。」

未来に呼ばれ、嬉しそうに振り返る湖都音。
那柚の母は、私も呼んでというような表情で未来を見ている。

「私…、考えたいことがあるの。
1人で歩いて帰るから、2人をちゃんと連れてきてね?
……でわ、お邪魔しました。」

湖都音は未来の様子から何かを察したのか、笑顔で

「分かったわ。」

と言って見送った。
那柚の母は、大量に涙を流しながら嘆いていた…。

家を出た未来は、数歩歩くと立ち止まり、振り返った。

「来くん…ごめんね。」

誰も聞くことのない未来の声は、綺麗な夕陽とともに、消えていった。
誰も聞かないように、その場に…溶け込むように…。
一粒の雨を連れて……。











私のせいで皆が苦しむ。

少女はその小さな背に、
いったいどのくらいの
悲しみを背負っているんだろう。

誰も一緒に背負うことは不可能。
少女が離さないから?
いいえ、違います。









悲しみが、少女から
離れないのです。
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