甘い愛で縛りつけて


なんとなく、入ってきた時の声のトーンからそんな気はしてた。
やたら高い声だったし、どう考えても病人の出す声ではなかったから。

こっそりとため息をひとつ落としてから、ここにいても仕方ないと思いドアに向かって歩き出すと、後ろから恭ちゃんの声が追ってきた。

「実紅、戻るの?」

恭ちゃんだけじゃなく、恭ちゃんの前に座っている桜田先生の視線までもが私に向く。

その瞳はまるで睨みつけているようで。
無言の牽制に、まさかマドンナ先生が恭ちゃん狙いだとは……と苦笑いがもれそうになった。

「戻ります。身長も計ったし、事務長の薬ももらったので。
ありがとうございました」

敬語で返したのは、登校途中に話した通り、親戚だって嘘を広めたくないからだ。
それを恭ちゃんにも思い出させるためにわざわざ敬語を主張したのに、恭ちゃんは気付いてか、気付かずなのか、笑顔で実紅と名前で呼ぶ。

絶対に気付いているとは思うから、多分わざとだろうけど。

「実紅。また気分が悪くなったらいつでもおいで」
「……はい。また、もしも気分が悪くなったら」

そのまま保健室を出てドアを閉めると、すぐに中から桜田先生の声が聞こえた。


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