甘い愛で縛りつけて


「俺が堪らなく欲しいのは、おまえだけだ。昔からずっと、実紅だけが大事だった。
再会した時、それは今も変わってないって確信した」

夢かと思った。
だけど、溢れ出す涙が体温を残して頬を流落ちるから、現実なんだって確認する。

まっすぐに私を見つめる恭ちゃん。
そんな恭ちゃんに返事をしたいのに……想いが詰まって言葉にならない。

恭ちゃんがなんで私なんかを想ってくれるのかは分からない。
今の言葉が本心からなのかも、分からない。

昔とは変わった恭ちゃんと再会して、まだ数週間。
その間に恭ちゃんがどんな人なのかを見定められたかは分からないし、今の言葉や態度が本当かも私には分からない。
自信を持って、恭ちゃんの言葉が本当だって言いきるには、信じ切るには時間が短すぎる。

けど。
例え恭ちゃんの態度や言葉が嘘だとしても。

そんなのどうでもいいって思うくらい、恭ちゃんへの気持ちが大きかった。
全部がどうでもよくなるくらい、私は―――。



< 173 / 336 >

この作品をシェア

pagetop