甘い愛で縛りつけて
◇「俺の傍にいて欲しい」



――あの後。
田口さんはというと、忘れ物を取りに戻った事務長に発見されたらしい。
理由を聞かれた田口さんは転んで頭を打ったとか言ったらしいけれど。

私のバックも落ちてて中身も散乱していたしで、それを不審に思った事務長から恭ちゃんに電話がかかってきて。
そこで事情を知った事務長は、翌日、田口さんに次の異動で転勤させると告げた。

周りにその理由を言いまわるような事はしないけど、転勤先が決まったらそこの事務長には話を通すと。
そして、また同じような事をした場合、次はない。そう強く言い切った事務長に、田口さんは肩を完全に落として頷いていた。

次がないというのは、つまり懲戒免職という事で。
さすがの田口さんも、それを言われたらもう次はしでかさないと思うし、そうだと願いたい。


「それにしても、私が処分を言い渡した時には既に田口くんは憔悴しきっていたんだが……もしかして朝宮くんはその理由を知ってるかい?」

田口さんに処分が下された日の夕方。
保健室を訪れた事務長が聞いた。

下校時間を一時間ほど過ぎた校内には、吹奏楽部の演奏が小さく聞こえていた。



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