甘い愛で縛りつけて


だけど、なんでそんな事……。

だって、生きづらいだなんて。
恭ちゃんとずっと一緒にいたけど、恭ちゃんはいつも普通だったしそんな感じは一度も……。

一度もなかったけど。私の中で何かが引っかかる。

何かを、忘れてる気がする。

「性格も、ずっとこれが地。
品行方正に育てられたし、それが親の希望だってのも分かってたから、それに応えるようにそう演じてただけ。
早く言えば、優等生の演技してただけ。まぁ成績は元々よかったけどな。
色々と器用にこなせるガキだったから」

でも、何かってなに?

「演技って……昔の恭ちゃん全部が?」
「そ。周りの大人達が望むように演じてた方が楽だったから。あとは……まぁ、色々だな。大人の事情だよ。
でももうその必要もなくなったから、地を出すようになっただけ」
「大人の事情って……。だって、その頃恭ちゃんはまだ中学生だったでしょ? まだ子どもだったじゃない」
「物心付いた時からやってたんだから、中学生なんてもう十分大人だったんだよ。
周りが俺をどんな目で見てんのか、父親が何を望んでんのか……。その頃にはもう分かりきってたし」



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