Eat * Me
「……ん?」

「ほら、そうやって、いっつもぼんやりしてるし。仁那かわいいんだから、ひとりで登下校するときとか気をつけなよー」

「んー、気をつける」

「もぉ仁那は、いっつもマイペースなんだから~」



だって別に、わたしかわいくなんてないし。

そう言ったわたしに対し、まわりの子は笑いながら口々に「相変わらずだなあ、仁那は」なんて言っている。なんだかなあ。



「でもさあ、人間食べたいなんて思う人ってどういう思考回路してるんだろうね。だって自分だって同じ人間なんだよー?」

「ちょっともぉ、やめようよこの話ー」

「………」



きゃいきゃいと別の話題に移った彼女たちの声をBGMに、窓の外の景色を見ながらぼーっと考える。


うーんまあ、わたしはヒトを食べたいなんてこと、考えたことないなあ。



「(……あ、でも、)」



そこで思い浮かんだのは、意地悪そうに笑う、とある人物の顔で。


……『食べたい』、じゃなくて。

『食べられてもいい』と思う人なら、いるかも。
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