〈短編〉記憶の果てあるのは……?〈BL〉
第三章§全てを思い出した時
五人が来た日から
更に三ヶ月後、
季節は変わり
秋になった。

記憶は少しずつ
戻り始めていた。

その話を
稜さんにしたら
眉間に皺を寄せた。
「思い出して
欲しくなかった」

そっぽを向いて
拗ねた口調で言った
稜さんが可愛いと
思ったこは秘密だ。

いい傾向なはずだが
姉さんも稜さんも
眉を下げていた……

ボクだって、
いじめられてた時の
ことは思い出したく
なかったけど、
このままじゃ
駄目だと思った。

現実逃避して
平和に生きてるなんて
いけない気がした。

これは戦いだ。

「ねぇ、稜さん」

病室のイスに
座って読んでた
本から顔を上げて
返事をしてくれた。

「どうした?」

「全部思い出したら
転校しようと思ってるんだ」

「そうだな
俺も弘也が
あの学校に
通うのは
反対だったんだ」

稜さんは何時も
ボクの意見を
尊重してくれる。

三ヶ月後、
ボクは退院して
転校手続きをした。

今日は数ヶ月だけ
通った高校の卒業式。

少しの間しか
居なかったのに
皆、優しくしてくれた。

稜さんは
自分の学校の
卒業式と被って
来られないけど、
姉さんは来てくれた。

稜さんは
今日が終わったら
あの学校を辞める。

そして、隣町の
私立学校に
勤めることになった。

そして、春から
稜さんはうちで
暮らすことになった。
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