小春日和
母親の育児放棄でガキの頃から親戚の家をたらい回しにされ、食事も満足に与えられなかったせいで、すっかり胃が小さくなっちまったらしい。
しかも食べる事に頓着しないせいで、ほおっておくと一日一食なんて事がザラに有るらしく、体を壊すんじゃないかと、いたく心配した組長が、腹一杯だと言う姐さんの口元にせっせと飯を運んで食べさせる。
初めてその光景を目にした時、俺は顎が外れるんじゃねえかってぐらい驚いた。
小さな口でムグムグと運ばれてきた飯を食べる姐さん。その様子をとろける様な笑顔で見守る組長。
普段はそこにいるだけで他を圧倒する存在感っつうか、関東一の極道のトップが放つ独特の威圧感みたいなもんがダダ漏れなのに、それが微塵も感じられないとは………。
それはある意味、すっげえ衝撃映像だった。
そんなことが毎食毎に繰り広げられてるため、組長と一緒に食事する朝晩はそれなりの量を召し上がっているのだが、問題は昼だった。